クリムゾン・ルーム公式サイト CRIMSON ROOM

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イントロダクション

推薦コメント

各界からの推薦コメント(3)

 文芸書シーンに突如巻き起こった新しい旋風に、各界から絶賛のコメントが届いた!

 現在、世間を震撼かつ驚愕させているノンストップ・クロスジャンル小説「クリムゾン・ルーム」。読み出したら止まらなくなる睡眠不足の恐怖に陥った人々が、業界にも数多く存在するようだ。

 ここでは、ミステリ評論家、作家、書評家、有名ブロガー、書店の名物店長さん達のコメントを随時UPしていきます。

「二つの部屋」の物語

仲俣暁生(なかまた あきお/フリー編集者・文筆家)

1964年生まれ。『ワイアード日本版』ほか雑誌の編集者を経てフリーランスに。現代小説、出版文化、ネットなど幅広い分野で執筆を行う。著書『極西文学論』『「鍵のかかった部屋」をいかに解体するか』など。

 「密室もの」といえばミステリの常道のひとつだが、普通、そうしたミステリは閉鎖された空間を外から開こうとする者たちの視点で描かれ、閉ざされた部屋の内側で本当に何があったのかは、決して語られることがない。なぜなら多くの場合、部屋のなかにいた者はすでに死んでいるからだ。他方、ポール・オースターの『鍵のかかった部屋』のような純文学作品では、「密室」は主人公の自意識のメタファーとして、立ち入ることがためらわれるような一種の謎めいた場所、その秘密を明かすことが作品の根幹にかかわるような場所として描かれる。

 高木敏光の『クリムゾン・ルーム』という小説は、2004年にインターネット上で発表され、全世界で爆発的な人気を呼んだオンライン・ゲームからその名が採られているが、このゲームを単にノヴェライズしたものではない。洗練された良質のエンタテインメント小説でありつつ、クリエイターとしての高木敏光の創作の秘密に迫る一種の「私小説」としても十分に読みうる作品だと思う。そうした読み方を読者に嗾すように、この小説の主人公の名は作者と同じ「高木敏光」とされている。カリスマ的なゲームクリエイターである主人公は、人知れず深いスランプに陥っている。主人公がスランプに陥った理由は、001章「幻」の最後で早くも明らかにされる。「私の心の奥底の、もう一人の私だけが知っている、ある枯渇の実感だったのだ」──この小説の主題はここにある。

 この物語にはもうひとり、影の主役としてKという少年が登場する。Kは、高木にとっての「もう一人の私」が実体化したような存在だ。高木の作るゲームを心から理解し、その作風にかなったゲームを作ることさえできるこの熱烈な信奉者を、高木はスランプを脱出するための手段として利用する。高木は窓のない小さな部屋を借り、そこにKを住まわせる。その後、カジノで大負けした高木は、深紅の部屋に一晩監禁され、悪夢のような体験をする。だとしたら、Kも彼の部屋で、別の悪夢を観ていたはずだ。この小説はスランプに悩むクリエイターの高木と、ある切迫感に突き動かされたKという少年の物語であると同時に、それぞれの姿と正確に対応した、二つの部屋の物語なのである。前者はどこまでも深い紅であるのに対し、もう片方は凍てつく寒さのような純白の印象があるが、それは中年と少年、すでになにものかを持ち、それを失いつつある者と、いまだになにも持たざる者の象徴でもある。両者の織りなすドラマは、エンタテインメントというお約束ごとを越えて、ものをつくることの本質にある狂気へと辿り着く。

 きわめて魅力的な脇役のキャラクター(とくに女性たち)や、物語の舞台となる札幌という街の存在感も濃厚だが、やはり鬼気迫るのは、Kという少年のなかにある、主人公以上に深い絶望である。物語の悲しい結末を知った後、Kの視点から見た『クリムゾン・ルーム』の別バージョンを、たまらなく読みたくなった。