
date: 2008年04月01日 | text : N島 縦 |RSS|
昨日までの雨もあがり、新年度の始まりに相応しい快晴となった。
どうやら生き残った桜が、これで最後の艶姿を衆目に晒している。
明日4月2日、小説「クリムゾン・ルーム」が配本となる。
配本とは、製本所からトーハン、日販などの取次店に搬入された本が、各書店に運ばれる日のことだ。
もちろん全国の書店に並ぶ日については、地域によって時差が発生する。
強力プッシュをしてくれている書店リブロの‘ダンディ’石川部長からの情報によると、都内のリブロでは3日の午後イチには店頭に並ぶそうである。
みんな、Check it out! だ。
その他、全国各県に行き渡るのは4日か5日にかけてということになるだろうか。
遠く九州から、リブロの店長・栗田氏より高木敏光あてに熱いメッセージが届いていた。
この栗田氏は、例の‘作家養成ゼミ’に福岡から毎月のように馳せ参じていた、リブロでも名を知られた伊達男である。ゼミの終了後、高木はいつも十名余りを率いて新宿ゴールデン街で飲むのが常だったが、栗田氏は、翌朝の飛行機で九州へ帰るという強行日程でありながら、いつも最後まで高木と杯を重ねていた行動派でキップのいい書店人だ。
高木敏光あてに届いた彼のメールの一部を紹介する。
「クリムゾンルーム」、ゲラ版届いてすぐ、一気に読ませていただきました。
主人公の高木敏光への興味はもちろんですが、Kという人物への興味が異様に湧き、「ディス・イズ・ノット・フロム・タカギズム」という言葉が出現した時点から最後まではメチャクチャのめり込ませていただきました。
うまく言葉にできず申し訳ございません。でも高木さん本人主演で映像化、切望です!!
福岡西新店、XXX冊仕入れます。
西鉄平尾店のコクリこと栗田朋子さんとともに福岡での販売はお任せください。 クリ&クリでクリ売りまクリ!! ます。
福岡、必ず来てください。 お待ちしております。
株式会社リブロ 福岡西新店
栗田克明
文中の‘コクリこと……’というのは福岡の別店舗の可愛い店長さん。店長とは偶然にも同姓なので‘大クリ、小クリ’のコンビで親しまれている。
販売の現場から愛されている商品や作り手というのは、決して悪いことにはならない。
いやむしろ大ヒット商品になる可能性がある。
これは、商品のジャンルを問わず、モノを売るときの暗黙のルールであることを、俺はかつていろんな業界で現実に体験してきた。
さらに、発売目前だが、リブロ系列ロゴスでのネット予約状況も上々の模様。
デジタル業界のクリエイター出身である高木敏光らしく、ネット上での話題が先行していることも読者の期待を大いに感じさせる事実である。
あ、そうそう。
皆、読んでいるとは思うが、配本前夜の著者の動静が、TAKAGISM BLOGに読み応えのある手記として載っているようだナ……。
ここまでの情報は、俺が高木や他の人間から直接仕入れたものである。
──あの日以来、I川今日子からの電話や、メールは一切ない。
俺からの電話も、全てあの留守電メッセージに繋がった。
これでは「私が、あの不審な女です」と自ら語っているようなもんではないか?
いや、たとえそうだとしてもこのリアクションは、俺には解せなかった。
俺は高木やE垣さんにI川の勤務先などを改めて訊いてみた。
が、誰も知らなかった。
初対面で渡された彼女の名刺は、名前と例のIP電話の番号だけが載った、とてもシンプルなものだった、とE垣さんが教えてくれた。
これは何かのイタズラだ、と思いたかった。
俺が会いたがっているのを知るI川が、俺をからかって、どんな反応を示すのかを見るために仕掛けたイタズラ。
そう、ゲームとしての恋愛を弄ぶ男女がよくやるように、本音を明かさずに気をもたせ、相手の心を推し量ろうとする幼い駆け引き、そんなものであってほしいと俺は思った。
しかし、現実に起こっていることは奇妙であり不可思議なところが多すぎて、俺には理解しがたいことばかりだった。
仕事の依頼主が消えちまって、どうするんでえ……。
俺は、誰にともなく、呟いた。
おまえの大好きな高木敏光の「クリムゾン・ルーム」が、もうすぐ世に出て、書店に平積みされるんだぜ。
I川今日子、どの街で、おまえはそれを眺めている?
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