クリムゾン・ルーム公式サイト CRIMSON ROOM

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特別企画 N島リポート"

特別企画 N島リポート

第25回 マリ-アンヌは、警備隊員に非ず

date: 2008年04月09日 | text : N島 縦 |RSS

経営不振でトンでしまいそうな店子の経営者を訪ねた蒲田は、空振りに終わった。
自宅マンションのベランダに男物の洗濯物が干してあったので、ここにいることは間違いない。玄関先には誰も出てこなかったが、いかにも細君が居留守を使っているような気配がプンプン漂っていた。
俺はケレン味たっぷりの催告書を、郵便受けに差し込んで退散した。
予想されたこととは言え、徒労感がつきまとった。

次のアクションとしては、その社長の生家であり、いまは隠居中の父親が住む家を攻める予定だった。
場所は北青山。
築30年は経つ、ちっこい家だが、祖父の代からここに住んでいたようだ。
いまの地価でも2億はくだらないだろう。
押えておかなきゃならん……。

青山出張にあたり、俺は今日も少し早めに出て、寄り道をするつもりだった。
目的地はリブロ青山店。

外苑前駅のY字型交差点にあって、ひときわ目立つBMWのショールームの地下に、リブロ青山店はある。
3シリーズのカブリオレのオーナーだった頃の自分が懐かしい。
と、いうのは嘘で、俺は最近、その頃の事をちっとも思い出さない。
外車を2台所有し、まだ明るい内からクラブ遊びや合コンに明け暮れていた、エセIT社長だった俺は、搾取と蕩尽の海を泳いでいた。
当事の俺には、何か得体の知れない魔神が取り憑いていた。
自分が何をやっているかも判らずに、現実と夢現の境目に張られたロープの上を、そうとは知らず猛スピードで走っていたんだ。
あの頃に、俺は随分といろんな世界を見たし、右から左に沢山の金を動かした。
そして、多くのモノを失った。
アレは、俺だったのだろうか?
──といえば、無責任に聞こえることだろう。
が、狂騒と混沌に放り込まれる真夏の祭りの一夜のような瞬間が、誰にでもあるだろう。
それが、俺の場合はちょいと長く続いてしまったのだ。
そんな、杜撰でインチキで理念なき商売は、間もなく当然のように崩れ去るのだが……。
いま、新宿の片隅で、こんな稼業を飽きもせず続け、ひたすら自分の足と電車を頼りにして、汗をかいている俺のほうが、ずっと冷静で、落ち着いてはいる。
ところが、その頃の俺しか知らないヤツは、いまの俺を見て俺らしくない、と言う。
俺にも、実際のところ、どちらが本当の俺かは判らない……。

──ま、そんなレポートじゃあないよな、これは。
ピカピカしたニューモデルのセダンを横目でチラと見ながら地下の書店入り口へと階段を降りる。
この店ではTAKAGISMスタッフのE垣さんのプチ個展が、つい最近まで開催されていた。いわば縁の深い店舗である。

「おお」
店舗に入って左手の壁一面に「クリムゾン・ルーム」が居並ぶ。
中心に大きな作り物のパネル。これは、版元の製作によるものか? 基調カラーの赤に、白が効果的に使われている……。
高木敏光を全面応援してくれているリブロは、各店でいろんな店頭展開をしているので、高木敏光のコアなファンは、見比べてみるのも一興かもしれない。

P4030012.jpg

お?
平積みのところで、美大生風の女の子が、一冊手に取っている。
パラパラと頁をめくったり、表紙や奥付などを確認している。
あの雰囲気は、高木敏光をあまり知らないのか?
……しばし、迷ったようだが、意を決したようにレジのほうへ。
やった。毎度ありい!
俺は、彼女を抱き締めてやりたかったが、我慢した。
話しかけて「俺はN島。この本書いた男とは、ちょっとした知り合いでな……」と要らない解説をしてやりたい衝動に駆られたが、それも我慢した。
新手のナンパだと思われては、心外だ。
いや、それはそれでありか……。

などと、あらぬことを想像しているうちに、彼女は店を出てトコトコと階段上っていってしまった。

改めて、パネルを眺めると、それが俺に何を思い出させるのか、気付いた。
‘ウルトラマン’のカラータイマー……。
そういえば、例の‘泥塗り’ジャケットカバーをとった本体は、赤黒の斑模様が「ウルトラQ」オープニングのタイトルバックに似ている。
と、思うのは俺だけか?
そんなこと言ってると、装丁の鈴木成一先生に「失礼な!」と叱られるかもしれん。
が、N島縦の美的センスなど、しょせんそんなものだ。
何しろ、円谷プロと石森先生と水木先生に幼少時の感性を育てられ、いっときは砧の特撮ラボの近くに住んでいた男なのだ、俺は。
だが、この符合は何を意味する?

円谷プロ → 怪獣 → 創造の魔物、降臨
特撮モノ → 世界の先駆け → 新ジャンル小説・ゲーム
カラータイマーは3分 → 限界への挑戦 → 密室からの脱出
ヒロインはアンヌ隊員 → ヒロインの一人はマリアンヌ………

ほうら、いろいろ共通点があるじゃねえか!
……ねえか。
ま、つまりは「クリムゾン・ルーム」が世界照準ってことよ!

俺は同郷の旧友にプレゼントするために、また1冊「クリムゾン・ルーム」を買った。
リブロで買うことで、7月1日まで特典が手に入るプレゼントカードも貰えるのだ。
ただ、著者の高木がにわかに多忙となったせいで、肝心の特典がまだ出来ておらず、申し訳ないとのこと。
これに、高木のサインがあれば完ペキだな……。

残念ながら、リブロが近くに無い読者は、他のお店で買っておくれ。
さらに、近くの本屋さんに無いよー! ……という不幸な人々は、注文してくんな。
E垣さんによって、注文票つきの美しいチラシが、今日じゅうにはこのサイトからダウンロードできるだろう。

さ、新宿に戻るか。
洒落のめした青山の街は、なンか落ちつかねえ。
というか、辺りに小奇麗な女が多すぎて目移りして、しようがねえ。

そのとき、携帯に着信があった。表示は舎弟3号のアキラ。
俺は慌てて電話に出た。
ヤツに指令を与えてあったのだ。
「おう」
「アニキぃ! ……判りましたよ! あの電話番号の住所が」
「でかした、どこだ?」
「練馬の春日町。‘としまえん’のあたりです」
「遊園地の‘としまえん’か……?」

俺は、I川今日子の捜索の為に、アキラに内偵をさせていたのである……。

つづく

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