クリムゾン・ルーム公式サイト CRIMSON ROOM

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特別企画 N島リポート"

特別企画 N島リポート

番外編 N島縦とは何者か?

date: 2008年06月04日 | text : N島 縦 |RSS

お知らせが、2つある。
すでにTOPの最新情報ページで告知済みだが、来週金曜日に生の高木敏光に接することのできる機会がある。
西麻布スーパー・デラックスにて開催するCSS Nite shuffleがそれだ。
これは基本的にネット上で活躍する気鋭のクリエイター達のトークショーだが、高木の出演するセッションでは、ネット界の製作者という立場にありながら小説という領域で作品を発表した2名の大物の組み合わせということで、高木敏光と住太陽氏が対談する。
いま、なぜ小説なのか? なぜ紙と文字なのか? インターネットと書籍メディアの魅力の相違とは……?
きっと、刺激的な創作論議が繰り広げられるはずである。

それと、講談社『Style』7月号はもうご覧になったかな?
これは、最近メディア掲載された一連のインタビューとはちょっと趣が違う。
‘素敵オーラのある女性’というテーマで、魅力的な女性とはなにか?という持論を石田衣良先生ほかの著名人がそれぞれ語るという特集内での記事なのだ。
「クリムゾン・ルーム」のマリアンヌや桐子を始めとして、高木敏光の小説にはとても魅力的な女性キャラが必ずと言っていいほど登場し、男女を問わずファンは多い。
かくいう俺も、マリアンヌにはかなり萌えさせてもらった……。
作品で描く女性像には、当然ながら高木自身の豊富な経験からくる女性観が色濃く反映していることだろう。
記事内の彼のコメントから、その一端が垣間見えるかもしれない……。

さて。
東京は梅雨入りしたな……。
「クリムゾン・ルーム」はコンスタントに売れており、高木敏光も次回作の準備に余念がない様子だ。
小説的タカギズムの世界は今後、着実に世に浸透していくことだろう。

このリポートも、気がつけば5ヶ月間にわたって続いていた。
最近「N島さんって、いったい誰なんですか?」という質問を時折、頂くようになった。
かねてからの高木敏光のファンや読者であれば、多少は俺を知っていると思うのだが、小説「クリムゾン・ルーム」で高木を知った新しいファンも当然ながら沢山いる。

そこで改めて、簡単に俺のことを語っておこう。
自分を語るのはこっ恥ずかしいのだが、誰も俺を紹介してくれやしないからなぁ。
(I川今日子、本当ならリポート依頼主であるおまえに、やってほしかったんだがな)

不特定多数の方々に初めて俺の名が知れたのは、高木敏光の幻のブログ小説『ササイのことで思い出した』の作品内でのことだ。
以前のリポートでお知らせしたとおり、この小説は加筆修正を加え7月より某メディアで連載されることが決定している。
3年ほど前に始められた初回バージョンは、少しミステリーチックな導入部から始まる高木的青春恋愛小説だった。
一人称‘俺’の回想形式で、東京で過ごした大学時代の青春と恋愛が描かれる、おそらくは自伝的要素の強い作品。
主人公はまるで『赤と黒』のジュリアン・ソレルのように、知性と野望と好奇心を持て余してはいるが、今はまだなにひとつ手に入れていない若き学生である。キャンパスで発見したギリシャ彫刻のように美しい女性との物語が、アルバイト先での出来事や友人達との交流などを交えて瑞々しく活写されていく。
青春時代の多くがそうであるように、有り余る程の時間を所有しながら、その時期が持つ本当の価値に無頓着で、徒に本能や欲求のまま興味の対象に自分を駆り立てていく奔放かつ豊潤な刻……。
俺の記憶するところ『ササイ……』はそんな小説だった。

で、まあその作中に登場する自堕落な友人の一人として俺の名が出てくるんだな。
もちろん全部が真実では無いが、間違いなくこの俺がモデルであることは認める。
最初これを読んだとき、俺もとっくに忘れてかけていたあの頃の空気感みたいなものをありありと思い出し、懐かしさがこみあげたもんだった。

『ササイ……』は高木敏光が文学の世界に回帰してくる契機となった作品であり、この作品がブラッシュアップされ世に出されるというのは、俺にとっても感慨深い。
作品中の長島縦は、赤ん坊に毛が生えたような‘超’のつく甘ちゃん坊やで、そのままいけば社会に適合できずに弾かれて、あっという間にドロップアウトしていきそうな脆うさを備えた、夢見がちでモラトリアムなガキである。
その後の俺の人生を見たとき、その予想は、半分当たり、半分は外れたといえよう。
有り余る長い時間を共有した東京での学生時代が、やがて終わりを告げ、高木や俺はそれぞれの社会に出て行く。

高木敏光は学生時代から書いた小説で、何度も文学新人賞を取り損ねた挙句、ネット世界のクリエイターとして大成していった。
俺は、何社もの会社勤めや起業を経て、出世と凋落、栄光と失墜を繰返すジェットコースターのような人生を歩んだ。
上場企業でのサラリーマン、金貸し、成功哲学や洗脳セミナーのインストラクター、風俗業、喫茶店マスター、キャバクラの黒服、エセIT企業の経営、環境・エコビジネス、等々……
俺はけっこう多くの職業を経験した。
エネルギーを集中すれば、どれもそこそこの成功を収めた。が、
もっと続ければ安定する、というところでいつも俺はレールから外れてしまうのである。
途中まで築き上げた楼閣をあと1%というところで、壊してしまうのである。
とは言っても、それは俺が意識的に仕組んだものばかりではない。
会社の倒産とか、誰かの不祥事とか、何か不測の事態が起こるという外的要因で居られなくなったりすることもしばしばだった。
君子ではない俺は、危ない橋もずいぶん渡った。成行き上、しかたない時もあったが、好んで火中に飛び込んでしまうことも多かった。
スレスレにイリーガルな行為や局面、ヤマ師や詐欺師の連中、裏稼業の方々と袖が摩り合う場所にも、多く顔を出した。
煮え湯や泥水をたくさん飲んできたし、贅沢三昧に明け暮れた日もある。
何度か命の危険を感じる修羅場があり、逃亡を余儀なくされる時期もあった。そのたび、俺は価値観の逆転や人格の変容さえ起こるような経験をしてきた。
そうして、振幅の底を打った後は必ず、決して本流ではない辺境にいつも俺は居場所を見つけるのだった。

ただ「人は思い描いたとおりの自分を生きる」というこの世の法則からすれば、実はそれらは全て自分が望んだことのような気がしないでもない。
2度目の離婚をした頃だったか、あるガールフレンドに言われた。
「タテさんって、すごく飽きっぽいのね」
「そんなこたぁねえよ。ただ、俺はいつも何かに挑戦していたいんだ」
「なんて言って、面倒くさくなったから逃げてるだけじゃない?」
「違えよ。俺の美学が通用しない世界には、長居しないのさ」
「ようするに、なーんにも執着がないのね?」
「いや、執着がなきゃあこんなに苦労しないゼ。もっと幸せになってるはずだ」
「じゅうぶん、幸せそうに見えるけど」
「そーかぁ?」

確かに俺は、仕事に取り組んでも、女を口説いていても、俺なりに「これについてはわかった。もういい」と思うと、すぐ次に行ってしまうところがある。
これで、俺に応分の学問と才能と行動力さえあれば、実業の世界ならリチャード・ブランソンのような大起業家、芸術の世界ならジャン・コクトーのようなマルチな存在になっていたことだろう。
……という駄法螺はともかく。

実際、生来の怠け癖と、遊び好き・賭事好きと女好きが影響して、あと一歩で軌道に乗るというところで、いつも人生のコントロールを失うのである。
話だけ聞いている分には、こういうヤツは面白いかもな。
けどまぁ、俺のそばで巻き込まれた人間にとってはえらく迷惑だし、たまったもんじゃないわな。

これにもう一枚‘酒好き’というアイテムが加わっていれば、俺はきっと完全に社会の枠からはみ出した失格者で、今ごろは塀の中にでもいたかもしれない。
バッカスの神には嫌われたのか、3杯も飲めばゴキゲンに酔っ払っちまうという可愛らしい体質の俺は、酒場は大好きだが酒そのものに溺れることはついぞ無く、なんとか人間としての体面を首の皮一枚で保っている。

そんな、単純なのか屈折しているのか自分でも解らないのが俺・N島という男。
厭きれて俺を見限っていった人間なんて星の数ほどいるなかで、高木敏光だけはなぜだろう? ……つかず離れず、今まで交流が続いているのだ。
何かと気にも掛けてくれた。
ヤツが単に物好きなのか、小説家的好奇心なのか、それとも高校時代から蓄積された与太な馬鹿話や、青臭い思い出を共有して語り合える希少な存在だからなのか?

とにかく、初めてヤツに会ってから、すでに四半世紀が経つ。
俺はこの先どんな人生になってゆくのか、正直わからん。
が、高木敏光はこれからもおそらく小説を書き続けていくだろう。
何しろ10代の真ん中くらいからヤツを知っているんだからな、俺は。
その頃の高木敏光はというと、紛れもなくロックで軟派な不良文学少年だったよ……!

【告知】
このN島リポートは先月までほぼ週2回のペースで更新してきたのだが、好評発売中の「クリムゾン・ルーム」が軌道に乗ってとりまく状況がかなり落ち着いてきた。依頼主のI川今日子が渡欧してしまうこともあり、今後は不定期での更新になるゼ!
ついでに俺の、ウルトラ気まぐれ更新ブログのアドレスを載っけておく。よろしくナ。

長島縦のブログ
http://tatenaga.exblog.jp/

つづく

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